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いじらしい犬
うららの誕生日を祝った一週間後の週末、私は友人と最近ハマってる岩盤浴を満喫していた。
合間ふと携帯をチェックすると、母と父の両方から着信があり、
「うーちゃんが、今日の昼から突然下痢をして嘔吐もくり返している!」との事だった。

その夜実家に駆けつけると、大量の汚物を入れたゴミ袋の山に埋もれ憔悴した母と、
救急病院に車で行かなければならない場合の為に
晩酌を控え夕飯も満足に咽を通らない様子の父、
そしてふらつきながらもお決まりのお帰りダンスをする犬が私を迎えた。

うららは以前にも激しい嘔吐で獣医さんのお世話になった事があるが、
話を聞くと今回のひどさはその比ではなかった。
下痢と嘔吐が始まってすぐに母がかかりつけの病院に連絡したのだが、
いつも来てくれる獣医さんは不在らしく、
代わりに年若い見習い風の獣医さんが往診してくれたらしい。

特に変なものを食べさせた憶えもこちらにはないし、
触診でわかる範囲では腫瘍がある風でもなく、結局原因はわからないまま。
このまま一晩様子を見て、病院は明日朝8時半から開院するので
何かあればまた連絡下さいとの事だった。
獣医さんが処方した4本の注射(内容は吐き気止め、整腸剤、止血剤、電解水、抗生物質との事)のおかげで、嘔吐と下痢がようやくおさまってきている様子だが、
薬が切れたら…と不安になる。
母の話では、下痢は4回目ぐらいから血が混じった赤茶色の水になり、
激しい嘔吐で力むと同時に、肛門から噴水のようにドバァーッと噴出するのだそう。
昼間は母1人だったので、床や壁に広がる下痢便の処理をしながらうららを看てやらねばならず、
特にうららが「がぁぁぁー!」という叫び声をあげながら
体全部を波打たせて非常に苦しそうに吐く姿を見て、
どうする事も出来ずそばで背中をさする事しかしてやれないのが本当に辛かったらしい。
それはまさに地獄絵図だったと母は言う。

気温の変化で冷えたのが原因のひとつかも知れないと思い、
湯たんぽのぬいぐるみを寝床に置いて暖を取るようにし、
その夜はケージのそばに添い寝をして何時間かおきに様子を伺っていたが、
幸い吐き気も起こらず、便も出尽くした為か出す事はなかった。
しかし血糖値が低下しているせいなのか、耳や手足の先が冷たくなっていた。
水を急激に飲ませる事を禁じられているので、ケージに付けてあった給水器は外していた。
しかしとにかく咽が乾くようで、急に起きだしてオスワリし、咽をぺちゃぺちゃ鳴らしながら
給水器のあった場所をジッと見つめ続けるうらら。
脱水症状を避ける為、湯冷ましに少しだけお砂糖を混ぜてちょっとづつ飲ませた。

吐き気と下痢が止まってからやっと12時間が経過した朝、
うららは体温も回復し、少し元気になったように見えたので、
ケージから出し、おむつをしたままでしばらく居間を歩かせていたら、
多分大好きな父の膝に乗ろうと思ったのだろう、
急に茶の間に居る父の方へと向かいだした。
が、父との距離が1メートルくらいの微妙な位置でうららは急に立ち止まり、
おもむろにオスワリをした。
待ち構えていた父が「はて?」という顔をし、私も後ろから見ていてなんだあの距離感は?と
妙に感じていると、うららのおむつから茶色い水がぶわわ~っと漏れだした。
また下痢が始まった。
さっき急にオスワリをしたのは、便意が起こってしまったため、
父の膝に行くのを躊躇していたからだったと思われる。
なんていじらしい、と思いつつ、
うららを呼び寄せておむつを急いで外して尻拭きにかかった。
元看護婦だった母は絨毯をハイターで拭きながら私に注意する。
「お尻拭いた紙でおしっこのとこ(尿道口)拭いたらあかんよ!膀胱炎になるから!」
言われた通りに何枚ものウエットティッシュで注意深くうららのお尻を拭いて、
また新しいおむつをつけてやった。

が、まもなく今度は明確な便意を感じたらしく、
おむつを付けたままケージ内のトイレトレーの上に乗るうらら。
「わわわわっ!うーちゃんちょっと待って!」と急いでおむつを外す。
するとケージの中から外へ柵越しに赤茶色の噴水が飛び出した。
またうららの尻を注意深く拭きながらケージまわりの掃除を行なう。
そうするうちに、部屋には便の匂いではなく鉄サビのような血の匂いが充満した。
うららは吐き気がおさまったせいもありそれでもわりかし元気で、
調子が悪いというよりは、最初に便を漏らしてしまった事への違和感と戸惑いで
ナーバスになっているように見えた。

「うー気にせんでええよ、誰も怒ってへんよ。すぐにキレイキレイなるからな~。」
と撫でながら声をかける。
が、立続けに襲う便意にもかかわらず、その都度マメにケージ内のトイレトレーに向かう姿が
これまたいじらしく涙を誘う。
ちゃんとトレーに排泄しようとしているうららの尊い意を酌んで、
おむつは取り外す事にした。
が、ケージ越しに何度も噴出されてはたまらないので、
ケージの側面にペットシーツを貼付けたりして
「よっしゃぁ!どんと来い!噴出便!」と、こちらの準備が万全になった頃、下痢はおさまった。
病院の診察が始まる頃に電話をして現在の状況を説明すると、
連れて来て欲しいと言われたので、皆が出かける準備をはじめた。
うららはそれを見て散歩に出れると勘違いし、
とてもうれしそうに玄関へいそいそと向かった。
そのいじらしさにまた泣いた。

「うーアホやなでっかい注射されに行くだのに。(泣)」

(続く)

p10000841.jpg
大好きなデンタボーンをかじるうらら。


p10000971.jpg
この数日後にどえらい事が起こるとは。。



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